性行痛について
なぜ性行痛はおこる？
性交痛とは、セックスの際に起こる痛みのことです。痛みが繰り返される場合には、性交疼痛障害（せいこうとうつうしょうがい）と呼ばれます。
性交疼痛障害とは、性交時に感じる痛みが慢性的に続き、日常生活に支障をきたす状態のことを指します。ここでは、なぜ性交痛が起こるのか、その原因と対策について詳しく解説します。
なぜ性行痛はおこる？
膣内の炎症や感染症
膣内、あるいは外陰部に炎症がある場合、痛みを感じやすくなります。
分泌腺の炎症や尿道の炎症が原因であることもあります。主な原因は炎症によるものです。性感染症（クラミジアやカンジダなど）によっても炎症が起こることがあり、これらの感染症は膣や外陰部に炎症を引き起こし、性交時に強い痛みを伴います。
放置すると感染が広がり、さらなる合併症を引き起こす可能性があるため、痛みがある方は早めに婦人科で検査を受けましょう。
膣内部・外陰部の萎縮
「挿入時の痛み」は、炎症や感染症だけが原因ではありません。膣内部や外陰部の萎縮も考えられます。
萎縮とは、組織が薄くなり潤いを失うことで、特に閉経後の女性ホルモン（エストロゲン）の減少によって引き起こされます。萎縮が進むと、膣の粘膜が脆くなり、乾燥や摩擦による痛みを感じやすくなります。
これにより、性的な興奮時にも十分な潤滑が得られず、挿入時に強い不快感や痛みが発生することがあります。エストロゲンが不足すると、膣の粘膜が薄く乾燥しやすくなり、性的興奮を受けても潤滑液が十分に出ず、摩擦によって痛みを感じやすくなります。
また、膣壁の弾力性も失われるため、挿入時の不快感が増します。更年期の症状としてよく見られるこの状態は、萎縮性膣炎とも呼ばれ、適切な治療が必要です。
処女膜が厚い
処女膜が生まれつき厚い場合にも、性交時に痛みを伴います。
通常、処女膜は膣口に近く、厚さは1ミリ程度です。とても柔らかく薄い粘膜ですが、まれに厚くて固い組織の場合があり、これを「処女膜強靭症（しょじょまくきょうじんしょう）」といいます。
この症状では、膣口が狭く、伸縮しづらいため痛みを伴うことがあります。無理に挿入しようとすると、大きな出血を起こす可能性があるため注意が必要です。処女膜強靭症は、婦人科での日帰りの切開手術で治療が可能です。
精神的な要因
身体には痛みを感じる要因がない場合でも、精神的な原因で痛みを感じることがあります。
これは心因性の痛みと分類されます。例えば、過去に辛い経験やトラウマを抱えている場合、セックスに対して無意識に恐怖心が生まれ、緊張によって痛みを感じやすくなります。
また、子供の頃に受けたセックスに対するネガティブな教育や、過去の不快な経験が原因で、性交に対する嫌悪感が強まり痛みにつながることもあります。
さらに、女性ホルモンの変動も精神的な状態に影響を与え、痛みを感じやすくすることがあります。
こうした精神的な要因に対しては、専門のカウンセリングやリラクゼーション法が効果的です。
前戯が不十分
「濡れる」という現象は、性的興奮から毛細血管が拡張して潤滑液が分泌されることで起こります。
前戯が不十分で性的興奮が得られないと、潤滑液が出ず、挿入時に粘膜の摩擦で痛みを感じることがあります。これは若年層から更年期を迎える全ての年齢層の女性に共通して見られる問題です。
十分な前戯が重要であり、パートナーと時間をかけてお互いの準備を整えることが大切です。
緊張やストレス
セックスに対して緊張感を抱く女性は少なくありません。
過去の経験、パートナーとの関係、自己肯定感の低さなど、さまざまな要因が関係しています。緊張やストレスがあると、性的興奮が得られず潤滑が不足し、痛みを伴うことがあります。
リラックスした環境を整えることが重要であり、アロマキャンドルを使ったり、穏やかな音楽をかけたりすることでリラックスした雰囲気を作り出し、セックスに対する不安を和らげましょう。
また、深呼吸を行ったり、軽くマッサージをしたりすることも効果的です。これらのセルフケア方法を日常に取り入れることで、リラックス効果を高めることができます。
出産後の影響
出産後は、ホルモンバランスが大きく変化し、潤滑液が十分に分泌されないことがあります。出産時に会陰部に裂傷があった場合や、ホルモンバランスの乱れから、痛みを感じやすくなることもあります。授乳中はエストロゲンの分泌が低下し、膣の乾燥を招くため、性交痛が発生しやすくなります。こういった場合は、産婦人科での相談や潤滑剤の使用を検討すると良いでしょう。
性行痛の解消方法
セックスはパートナーとの重要なコミュニケーション手段の一つです。痛みを感じることで避けるようになると、関係が疎遠になる可能性もあります。性交痛を解消するための方法を以下に紹介します。
- パートナーの理解を得る
- 潤滑剤を使用する
- 心理的治療法を受ける
- レーザー治療を受ける
- セルフケア方法
- 専門医への相談
パートナーの理解を得る
性交痛がある場合、無理にセックスを続けることは避けましょう。大切なのは、パートナーと真摯に話し合うことです。痛みの原因について共有し、解決に向けて一緒に考えることが重要です。例えば、前戯を長くする、潤滑剤を使用する、または特定の体位を避けるなど、痛みを和らげるためにできることを話し合いましょう。場合によっては、パートナーが治療やカウンセリングに同伴することも有効です。
潤滑剤を使用する
性交痛の多くは、膣から分泌される潤滑液の不足に起因します。潤滑剤を使用することで、物理的な摩擦を減らし、痛みを軽減することができます。特に更年期後や授乳中の女性には、潤滑剤が効果的です。水溶性の潤滑剤は皮膚への負担が少なく、パートナーと一緒に使いやすいでしょう。また、自分の体質に合った潤滑剤を選ぶことが重要です。
心理的治療法を受ける
性交痛がトラウマや不安などの精神的な要因による場合、心理的治療が必要です。専門のカウンセリングを受けることで、痛みの原因となる感情を整理し、解決へと導くことができます。治療には、認知行動療法（CBT）や、性に関するカウンセリングが有効です。また、リラクゼーション法（深呼吸や瞑想など）を日常生活に取り入れることで、心身を落ち着かせる効果も期待できます。
レーザー治療を受ける
閉経後の女性に多い膣の萎縮には、レーザー治療が有効です。レーザーを用いることで、膣の粘膜のコラーゲン生成を促し、潤滑を増やし痛みを軽減することが期待されます。この治療法は比較的短時間で痛みも少なく、婦人科での施術が可能です。また、ホルモン補充療法（HRT）も萎縮性膣炎の治療に効果があります。これらの治療については、信頼できる婦人科医に相談し、自分に最適な治療法を選びましょう。
セルフケア方法
セルフケアも性交痛の軽減に役立ちます。以下の方法を日常に取り入れてみましょう：
- リラックスする習慣を持つ: お風呂にゆっくり浸かる、ヨガやストレッチを行うなど、リラックスする時間を確保します。
- 骨盤底筋のトレーニング: 骨盤底筋（ケーゲル筋）を鍛えることで、膣の筋力と血流を改善し、痛みの軽減に繋がります。
- 適切な食生活: ホルモンバランスを整えるために、大豆製品などのエストロゲンに似た作用を持つ食材を積極的に摂取しましょう。
専門医への相談の重要性
性交痛は多くの女性が経験する一般的な問題です。恥ずかしがらずに医療機関に相談することが大切です。痛みが続く場合は、自己判断せずに婦人科を受診し、適切な検査と治療を受けましょう。症状が軽度であっても、早期に相談することで悪化を防ぐことができます。婦人科選びに不安がある場合は、口コミや地域での評判を参考に信頼できる医師を探しましょう。
FAQセクション
Q. 性交痛は何科の病院を受診すればよいですか？
A. 婦人科を受診してください。膣や外陰部の問題であれば、専門的な診断と治療が受けられます。性交痛は多くの女性が経験している問題です。安心して相談することが大切です。
Q. 精神的な原因で性交痛を感じる場合、どうすればいいですか？
A. 精神的な原因に対しては、専門のカウンセリングが有効です。過去のトラウマや不安を専門家に相談することで、徐々に解決へ向かうことができます。
性交痛は多くの女性が経験する悩みですが、適切な対処を行うことで改善が期待できます。自身に合った治療法やセルフケアを見つけ、前向きに対策を進めていきましょう。
